工数とは「ある作業を完了するまでに必要な人数と時間」を示す指標です。
「作業時間」と言い換えると理解しやすいでしょう。
主にソフトウェア開発やシステムインテグレーション、製造現場で使用される言葉であり、作業時間を「人数×時間」で表すのが特徴です。主に「人月(にんげつ)」「人日(にんにち)」「人時間(にんじかん)」という単位を使用します。
・1人月=1人の人が作業をしたら1ヵ月で完了する仕事量
・30人日=30人の人が作業したら1日で完了する仕事量
・720人時間=720人の人が作業したら1時間で完了する仕事量
1人月=30人日=720人時間
つまり1カ月を30日と仮定すると、1人月も30人日も、720人時間もまったく同じ仕事量を意味しています。
これが労働者がある課題を達成するのに、どの程度の時間を要したのかを計る指標ともなります。
この工数を管理することが、いわゆる工数管理というもので、一般的には「労働者の生産性を高め、仕事の効率化を図ること」と「プロジェクトにおける人件費を算出する」ことを目的とします。
工数計画の策定と実績の監視
初めにプロジェクトを開始するにあたって、必要なメンバーの調達を行います。
各メンバーのコストを考慮しながら、計画段階での見込利益を示せるまでの調達計画を作成する必要があります。
メンバーの調達が完了したら、続いて各メンバーの作業割り当てを行います。
詳細設計や製造といった工程ごとに役割分担をして割り当てる方法もありますし、機能ごとに役割分担して設計から単体テストまでを割り当てる方法もあります。
メンバーへの作業割り当てができたら、工数計画の策定を行います。
この段階で、各メンバーのコストと工数を掛け合わせ、プロジェクトの原価予算を算出できます。
次に実績の監視を行います。工数計画の策定上では利益が出ているからといって油断はできません。
プロジェクトが進行する中で、予想以上の工数がかかってしまうとプロジェクトは赤字になります。
たとえばプロジェクトが遅延しメンバーを増やした場合、明らかの原価は上昇します。
また、メンバー数は固定でも、当初の予定よりも作業時間がかかっている場合の原価は上昇します。
実績を管理すると、次のように工数が増えたとします。
当初の計画より2.5人月、実に50%も多く工数がかかっています。このプロジェクトは赤字になる可能性が高くなっています。
工数が増大した理由としては、計画段階での見積りの甘さが原因です。
このようなことが発生しないようにプロジェクト管理ツールを導入したり、週一回の進捗会議を実施したりしながら、プロジェクトの状況を監視することが必須です。
プロジェクトが完了してから「工数が増えてしまい赤字になった」では経営的に失敗です。
早期段階で問題を発見して修正すれば、赤字は免れることができます。
工数管理のポイントとは?
工数管理のポイントは「メンバーのスキルと実行できる仕事量」を正しく見定めることです。
システム開発における工数管理の場合は、メンバー各人のスキルによって1日の仕事量は大きく異なります。
また、メンバーが1日に費やせる作業時間についても注意しなければなりません。
1日8時間の作業時間の見積もりですと、会議や進捗共有などといった調整時間が考慮されていません。
実際は1日の作業に費やせる時間は、8時間より少なくなると言えます。
メンバーのスキルの見極めと1日に費やせる作業時間の見積もりを誤ると、1か月で大きな誤差が生まれてしまいます。
工数管理表を作るときには熟考を重ねましょう。
工数管理で失敗する主な原因として「メンバーの過剰な増員」と「余裕のないスケジュール」の二つがあげられます。
システム開発において主流の見積もり方法は「人月計算」です。
人月計算する際に「作業員を増やせば作業ペースが上がる」と誤解していないでしょうか。
しかし、メンバー各人のスキルによって一日当たりの仕事量には差があります。
メンバーの過剰な増員は、進捗共有など作業以外の連絡業務が増えるばかりで作業効率は上らず、プロジェクトの進行において必ずしも有効な手段とは言えません。
次に上げられる問題点は「余裕のないスケジュールはトラブルに弱い」という事実です。
メンバーの欠員や作業ミス、作業遅れなどのトラブルに直面した場合、余裕のないスケジュールでは破綻してしまいます。
そうなってしまわないために、必ずスケジュールバッファ(問題対応期間)を設けておきましょう。
工数管理において最も避けなければいけないのは、納期の遅れと人件費のコストアップです。
スケジュールバッファを設けない工数管理で進めてしまうと、結果的に個人の残業に頼ったマネジメントになってしまいます。
工数を正確に理解し、精度の高い見積もりができることが、プロジェクトマネージャーに求められるスキルです。
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